特集 白内障手術 Controversy '93
白内障をめぐる22のControversy
多焦点IOL—単焦点IOLとの比較で
魚里 博
1
1奈良県立医科大学眼科学教室
pp.124-127
発行日 1993年10月30日
Published Date 1993/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901913
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多焦点IOLのねらい
最近の高齢化社会に伴い,わが国でも眼内レンズ(IOL)の移植件数が増加しており,年間30万眼程度に達しているものと思われる。移植されているIOLの大部分はまだ単焦点IOLであり,術後の眼は本来の調節(ピント合わせ)機能が働かない固定焦点の光学系となる。そのため,良好な近方視力を得るために眼鏡を必要とし,ときにはさらに遠方用も合わせて眼鏡を必要とし使い分けなければならない。このような術後の煩わしさを解消し,調節機能の喪失という大きな欠点を補う目的で各種の多焦点IOLが開発されている。その代表的なものは,大別すれば,光の回折(および干渉)現象を利用したもの(diffractive multifocal IOL)と,いくつかの異なる屈折力の領域に分割し,光の屈折そのものを用いるもの(refractive multifocal IOL)がある。
前者の回折型は,すでにコンタクトレンズで使用されていた技術をIOLに応用したものである。0次回折波と1次回折波のみを利用して,それぞれ遠用と近用にほぼ等分割したものである。その強度比はほぼ41%(遠用)と41%(近用)であり,残り18%は高次回折波や散乱による損失部分である。そのため,単焦点IOLに比較して暗くなること,色収差が出やすいこと,高次回折波によるゴースト像が出ること,さらに最高矯正視力が遠近で低下することなどがあるため,どの症例にも適用できるものではない。
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