特集 眼科治療薬マニュアル—私の処方箋
疾患別薬剤投与プロトコール
角膜のアレルギー性疾患
田川 義継
1
1北海道大学医学部眼科
pp.90-92
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901354
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薬物療法の現況
角膜は正常時には無血管組織であり,リンパ管もないため,炎症や免疫反応の起こりにくい組織である。しかし,いったん角膜に抗原や病原体などが飛入・侵入すると角膜輪部の血管や結膜,さらには前房や隅角を通して炎症細胞や炎症にかかわるさまざまな液性因子が角膜に浸潤・移行し,炎症や免疫反応がおこる。角膜では,通常肥満細胞や好酸球などの細胞が常在しないため,結膜でみられる春季カタルやアレルギー性結膜炎などのIgE抗体が関与するI型アレルギー反応は起こらないといわれている。また,結膜アレルギーの治療については別の項で詳しく述べられているので,ここでは角膜におこる免疫反応による炎症性疾患の薬物療法について述べる。表1に角膜の免疫疾患をあげた。これらの疾患に対する治療薬として現在用いられているものとして,ステロイド剤,免疫抑制剤および非ステロイド系消炎剤などがある。これらの薬剤の中では,やはりステロイド剤の使用が全身投与,局所投与をとわず中心となるので,以下ステロイド剤を中心に,使用法の実際について述べる。ステロイド剤以外の薬物療法では,新しい免疫抑制剤であるシクロスポリンが,注目されている。シクロスポリンはすでに臓器移植の分野で高い有効性が確認されているが,眼科領域でも現在難治性ベーチェット病に対する新しい治療薬として用いられている。
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