連載 眼の組織・病理アトラス・42
落屑症候群
猪俣 孟
,
千々岩 妙子
1
1九州大学
pp.410-411
発行日 1990年4月15日
Published Date 1990/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900095
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落屑症候群exfoliation syndromeは高齢者の水晶体前面や虹彩の瞳孔縁に灰白色のふけ様落屑を生じる原因不明の疾患子ある。ふけ様落屑そのものは視機能に直接の影響を与えないが,落屑症候群患者では難治性の緑内障を伴うことが多い。落屑症候群は北欧諸国子高頻度にみられ,その他の国では比較的まれな疾患とされてきた。しかし,注意してみると,わが国でもまれ子はなく,50歳以上の高齢者にみられる開放隅角緑内障の大半は本症によるもの子ある。高齢者の増加に伴って患者は急増しているので,本症の眼科臨床における重要性はきわめて高い。
ふけ様落屑は,水晶体の前面,虹彩の実質,毛様体の無色素上皮層や虹彩の色素上皮層の後房側基底板,線維柱帯,チン小帯,結膜などの眼組織にその存在が確認されている。とくに,水晶体前面における沈着の様子が特徴的で,中心円盤,中間透明帯,周辺混濁帯が識別されている。水晶体前面のふけ様落屑はあたかも水晶体前嚢が剥離しているようにみえるので(図1),本症は偽落屑症候群pseudoexfoliation syndrome,水晶体前面の落屑は水晶体嚢偽落屑pseudoexfoliation of thelens capsuleと呼ばれ,ガラス吹き工などに生じる真の水晶体嚢落屑と区別されてきた。
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