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6 斜視弱視
未熟児網膜症に対するレーザー治療
野々部 典枝
1
1名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター
pp.98-99
発行日 2020年10月30日
Published Date 2020/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410213751
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手術・治療の概要
未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)は,早産児に起きる血管増殖性疾患であり,現在でも小児の失明の主要因となっている。出生時の網膜血管の発育が不十分で,無血管領域より血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)などのサイトカインが発生し,網膜新生血管を生じて網膜剝離へと進行する。ROPに対するレーザー光凝固治療は,わが国では1967年から行われており,最も確立した治療である。網膜無血管領域を凝固することでVEGFの産生を抑制し,ROPの活動性を低下させることが目的である(図1)。しかし,レーザー光凝固は周辺部網膜を破壊する治療であるため,特にzone Ⅰやzone Ⅱ posteriorのような血管の伸長の短い例では凝固斑が黄斑部に及んでしまい,中心窩の形態が異常となったり,周辺視野狭窄,近視化など多くの課題を有している1)。
近年,BEAT-ROP study2)やRAINBOW study3)などの多施設前向き研究の結果,ROPに対する抗VEGF薬硝子体注射の有効性が示され,2019年にラニビズマブがROPに対する適用承認を得た。今後,ROP治療は大きな治療方針の変化が起きることが予想されるが,決してレーザー光凝固が不要となるわけではなく,抗VEGF薬単独では鎮静化できない例や,退院後頻回に通院できない例に対してレーザー光凝固と抗VEGF薬の併用が行われるなど,両者の長所を生かした効果的な治療方法が模索されている。
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