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大都市の総合病院の救急外来はもちろんのこと,中小病院の外来さらには病棟での急変対応,また,郡部やへき地の診療所において遭遇する準救急的な健康問題など,われわれプライマリ・ケアに携わる医師は多様な健康問題に対し,病歴,身体診察,簡単な検査で対応する基礎体力を身につける必要がある。評者も,患者でごった返す総合病院の救急外来を一人でさばく経験,北海道の郡部で一人救急搬送される患者に対応する経験,訪問診療を行う在宅患者に想定外の急変があり慌てて往診する経験などを持ち,これまで数多くの救急に対応してきた。大事なのは,救急対応において一定のパターンを体得しつつ,例外的状況に対する鋭敏な感覚を養うことだと思う。そのために,経験ある指導医から学ぶことの価値は計り知れないが,そうした指導医が在籍する医療機関はそう多くないのが現実である。
ショック,喀血,頭痛,陰囊痛,高Ca血症,創傷処置,皮膚疾患への外用,肘内障の整復……。多彩かつ素早く的確な対応が必要な病態が広く網羅されている本書を手に取ると,その簡潔ながらも要点をしっかり押さえた内容が印象的である。特に「はじめの5分でやることリスト」は,次から次へと受診するER外来でオリエンテーションをつけるための一助となり,「検査」「鑑別診断」と一歩深めた評価がわかりやすい図表で示される。そして,「Q & A」では「そう,そこがいつも悩ましいところだよな」と感じる論点が詳しく説明されており爽快さを覚える。音羽病院という北米型ERのメッカで培われた指導医の知識と技術がふんだんに網羅された本書をポケットに入れて診療に臨めば,診療に臨む不安のかなりが解消されるだろう。あたかも,すぐそばに熟練の指導医が付き添ってくれているような感を覚える。
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