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眼感染症に関する教科書は数多くあるが,専門的になればなるほど知識のレベルは上がるものの実際の臨床現場で症例について調べるには使いにくい。ハンドブック的なものはちょっとした知識や数値の確認には便利ではあるが,写真がなかったり記載が不十分だったりすると,結局教科書を調べに行くことになる。毎日の外来診療においてもう少し使いやすい本があればと思っていたところに,この度,薄井紀夫,後藤浩両先生の編集による本書が刊行された。眼感染症各分野のエキスパートの先生方総勢41名が,臨床の場における実践的な利便性を追求し「極めてシンプルに効率よく」という編集方針に沿って記述した,まさにエキスのみが入っている本である。
本書を開いてみた感想としては,まず何といっても内容が見やすい。基本的なレイアウトとして左ページに文章,右ページに写真や図表というように配置されているため,文章を読みながら写真を探すのも,写真を見て文章を読むのも非常にやりやすい。行間が広いため読みやすく,また所々少し贅沢かなと思われるようなスペースがあることも読んでいて疲れにくく感じる理由かもしれない。具体的な内容としては,眼瞼疾患にはじまり,涙器・眼窩疾患,結膜疾患,角膜疾患,ぶどう膜・網脈絡膜疾患,眼内炎,術後感染症まで一般眼科臨床で遭遇する可能性のある疾患が十分網羅されている。それぞれの疾患について疾患概念,臨床所見,病原微生物の同定,治療,生体反応への対応,続発症への対応および予後がきちんと分けて書かれているので必要な内容にたどり着くのが容易であり,しかもそれぞれが簡潔にまとめられているため理解しやすい。また各分野の冒頭には,その分野の疾患を理解するための鑑別の重要ポイントが述べられている。簡潔ではあるが非常に丁寧にわかりやすく書かれていて,眼感染症に対する知識がまだ少ない人でも診断や治療を間違えないようにとの道しるべになっており,編集者お二人の優しさがそこに見て取れる。写真もよく選ばれており数も多くまた図表もよくまとまっているので,若い先生方(若くなくても結構)には,ぜひ本書の右ページのみをざっと目を通すことをお勧めする。明日からの外来診療で患者さんを見る目が変わることは間違いない。
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