Ⅱ原著
殘生角膜の保生に就て
笠原 幹夫
1
1日本醫大生化學教室
pp.63-70
発行日 1948年5月20日
Published Date 1948/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410211087
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角膜は切り出した組織としても,驚くほど長い時間に亘つて保生に耐える(中村,江頭,島田1)及び笠原2))。例へば,血清の中で0〜5℃の温度に保存すると,少なくとも10日間位は,透明性を保つて居り同時に明らかに比較的高い呼吸能力を維持してゐる2)。以前に人間の角膜に就て島田1)が測つた時にも,20日間に亘つて呼吸が尚著明に維持されてゐた。この事は,角膜移植手術のために,移植角膜材料を扱ふ場合に,決して看過することの出來ない事實である。手術のために屡々比較的長い時間に亘つて移植材料を保生して置かねばならぬ場合があり,手術の成否が材料の生活力に關係するとすれば,材料の保生の限度を定めて置くことが,從つて,甚だ大切なことと思はれる。
移植材料の生活力と,其の透明性との間には,一定の關係があるものと推定されてゐる。植えた角膜の全層組織が,そのまま生き殘つて透明性を維持して治癒に至るといふ樣なわけのものではないと思はれるが,結果から見れば,成績は透明度の維持されてゐる材料の方がよいのである。從つて透明度には,其生活力の程度が反映されてゐるものと考へられる。
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