特集 眼科外来診療マニュアル—私はこうしている
巻頭言
眼科外来診療の心得
鹿野 信一
1
1東京大学
pp.1425-1428
発行日 1989年9月30日
Published Date 1989/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210954
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1.カルテがおしえる
すこし古い話になるが,私が医局に入り眼科を始めた頃,瀬戸 糾先生という方が講師でおられた。先生は熊本大学,当時医専の眼科の教授であられた方であるが,御事情があって途中退官され,そして熊本医専のまん前に開業,もの悽く繁盛されて,学校の患者も大部分が瀬戸眼科に移ったということであった。その後東大に戻られ,石原先生の下で講師をされていたわけである。大変に手術を得意とされ,いろいろと診療のことを教えて頂いた。私が診療の心得というものを叩きこまれたのは主としてこの先生であった。
「君,患者が来たらまずカルテをみることだ。初診だって住所や年齢がかいてあるだろう。大体近くの患者は軽いのが,遠いのは重いのが多い。近くのものは,あの医者すこし流行っているようだが,いってちょっと様子をみてくるか,なんていうのが来るんだ。それとも患者が忙しくて遠くにゆかれないというのもあろう。とにかく近くのものには時間をかけずに早くすましてやることだ,その方が患者は喜ぶ,汽車で来たというような遠い住所の患者は,こりゃわざわざ俺にみて貰いたいというわけなのだから,汽車の時間位かけて診てやることだ,そんなに時間をかけなくてもすむと思っても,普通以上に丁寧に,途中暫く休ませてもいいんだ,よくみて貰ったという印象が大事だよ。
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