連載 眼の組織・病理アトラス・24
白血病性網膜症
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.1116-1117
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210518
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白血病leukemiaは未分化な白血球が腫瘍状に増殖する血液の癌である.白血病患者では,網膜,ぶどう膜,視神経,眼窩,結膜などの眼組織に出血や白血病細胞の浸潤,その他多彩な合併症が見られるが,そのうちで網膜と脈絡膜の病変が目立つ.白血病患者にみられる網膜病変を白血病性網膜症leukemic retinopathyと呼ぶ.白血病性網膜症の主要病変は網膜血管の怒張蛇行,出血,白斑,網膜剥離などである.
白血病細胞の増殖によっ血液粘稠度が亢進し,血流は緩徐となってうっ滞し,血栓を形成する.血栓形成による血管内圧の上昇と血管壁透過性の亢進,白血病に随伴する貧血や血小板減少,さらに血管壁への白血病細胞の浸潤などによって,血管壁が破綻して網膜出血が起こる.
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