文庫の窓から
眼科龍本論十六巻
中泉 行信
1
,
中泉 行史
1
,
斉藤 仁男
1
1研医会
pp.412-413
発行日 1987年4月15日
Published Date 1987/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210004
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中国眼科の古典として代表的なものに葆光道人秘伝の「眼科龍本論」という眼科専門書があるが,これはインド眼科の「龍樹菩薩眼論」によるところが多いといわれ,五輪八廓説を掲げ,眼疾に内障24症,外障48症を挙げ,中国宋元代の以後の固有説を含んだ撰書といわれている."龍樹","龍木"とした理由について,劉昉の著「幼々新書」の所説によると,宋の英宗がその諱を嫌って樹の文字を廃して木の文字に改めたという,と述べられている(福島義一著「日本眼科全書」).ここに掲出の「眼科龍本論」の"龍本"は果たして龍木が龍本になったものかどうか確かなところはわからない.本書の巻頭によると,その編集,刊行,校正者の名に,建寧路官医提領陳志刊行,南豊州医学教授危亦林,編集,江西等庭官医副提擧余賜山校正となっており,これらの編集者によって書名が付けられたとも考えられ,もとは刊本であったものと窺えるが,掲出本は写本として後世に伝えられたものと思われる.
本書はおよそ152葉の料紙(和紙)に精写し,全1冊,4針の和綴(27.3×18.6cm)に仕立てたものである.その前半50葉は漢文,中77葉は和文の記述で,後半25葉には彩色の眼病図が多数描かれている.内容的には中国明代のいわゆる漢方眼科を記述したもので,その主な項目を抄記すると以下の通りである.
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