連載 眼科医のための推計学入門(1)【新連載】
医学情報と分布型
大野 良之
1
1名古屋市立大学医学部公衆衛生学
pp.242-244
発行日 1987年3月15日
Published Date 1987/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410209963
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はじめに
本稿は,"眼科医のための推計学入門(1)"である.しかし眼科医のためだけの推計学があるわけではなく,推計学的手法の解説にできるだけ眼科領域のデータを用いることを意味するにすぎない.また"統計学"としないで,"推計学"としたのは以下の理由による.
"資料数が200とか300以上なければ,本当のことはわからない"という考えが,今なお一般的である.これは1800年代の記述統計学によった考えで,たしかにこの統計学は資料が極めて多数であると仮定して近似する理論に基づいていた.したがって,この統計学では資料数が少ないと近似式が成り立たなくなり,理論的に合わなくなってしまう.しかし現代の統計学は1900年代にFisherを中心として体系づけられたもので,実験や観察により得られた結果からその背後にある集団(母集団)の状態を推測したり,研究仮説を検定したりするものである.つまり現代の統計学は"推測と計画の科学"(推計学)といわれ,決してたくさん集めた資料の後始末をするためのものではない.この理由のため統計学とはしなかったわけである.
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