国際眼科学会に向けて
メイン・レポーターの横顔—「網膜色素上皮」への期待
宇山 昌延
1
1関西医科大学
pp.349-350
発行日 1978年2月15日
Published Date 1978/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207599
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網膜色素上皮は,網膜の最外層にあるわずか一層の細胞で,脈絡膜との境であるBruch膜の上に一列に並んでいる。Bruch膜をへだてて脈絡膜毛細血管板があり,また色素上皮細胞のすぐ上には視覚の第一歩としてもつとも重要な視細胞がある。眼球の組織標本を光学顕微鏡でみるとこの細胞は網膜の最外層に,茶褐色の色素—メラニン顆粒—を多数含んだ褐色の列としてみえ,眼杯の外板すなわち神経外胚葉から発生した上皮細胞である。この細胞の機能として従来から,①眼へ入つた光線を吸収すること(光の散乱を防ぐ)。②ビタミンAの貯蔵と再生(視細胞外節にある視紅の代謝に関係)が知られていた。さらにこの10年位の間に,電子顕微鏡を主とした基礎的研究によつて,③視細胞外節の周囲をうめる粘性多糖類の生成,④網膜脈絡膜間の栄養,代謝産物の輸送,⑤視細胞外節の貪食と消化,⑥脈絡膜網膜関門,など重要な様々の機能をもつことがわかつて来た。
また同じ頃,螢光眼底造影法によつて従来全くしられなかつたいろいろの網膜色素上皮の病変がわかり,臨床家にも注目を集めるようになつた。例えば,われわれになじみの深い中心性網膜炎(漿液性中心性網膜症)は網膜色素上皮の病変によつて発病することが明らかになつたし,さらに網膜色素上皮剥離や,網膜色素上皮症,網膜色素上皮炎など耳新らしい病名が次々と生まれている。
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