談話室
眼科医からみた「安全な車」と「危険な車」
木村 肇二郎
1
1慶応義塾大学眼科学教室
pp.1497-1498
発行日 1977年12月15日
Published Date 1977/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207549
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わが国の自動車保有台数は1967年に1,000万台を突破し,71年に2,000万台,75年にはついに3,000万台に突入して,今や約3.5人に1人の割合で自動車を保有することとなつた。これと共に年々増加の一途をたどつた自動車事故による死傷者は,70年には実に100万人を数えるに至つた。わが国では従来,これら交通事故による死傷者のうち約80%が歩行者が被害者となるケースであり,残りの20%が乗車中の死傷者であつた。ところが自動車の使用条件や道路環境の変化などによりこれらの比率に変化があらわれ,69年31.8%,70年33.5%,71年34%72年35.5%,76年38%という具合に年々乗車中の死傷者の割合が増加してきており,車は「走る凶器」型から「走る棺桶」型へ移行しつつある。このことは歩行者の安全もさることながら,乗員の安全により一層の注意を払う時期がきていることを意味している。その一つとして,1974年度よりシートベルトの全席装備が法制化されたことは,乗員の安全に寄与するものとして評価されるべきことではあつた。しかるに警視庁の統計によれば,シートベルトの着用状況はわずかに一般道路では1%,高速道路では6%というものであり,シートベルトはあつてなきがごとき存在であつた。一方乗員の安全を確保するもう一つの重要な対策として,わが国ではほとんど関心がもたれてしないが,フロントガラスの材質の問題がある。
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