銀海余滴
「伊豆の町医者」とシユワイツエル
桐沢 長徳
pp.345
発行日 1960年2月15日
Published Date 1960/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206856
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1月22日9夜時半からNHK第1放送(生活のうた)で「伊豆の町医者」として石原忍先生の御日常がルポルタージユ式に放送された。石原先生が東大を定年でやめられたあと,伊豆の辟村でどんなに村人(現在は町になつたが)のために尽して居られるかということを,アナウンサーが石原先生や町の人々の話を挿みながら約30分間にわたつて放送したものである。先生の御生活がここ数年来,色々な雑誌や新聞で紹介されたことは読者の方方も既に御存知であろうが,先生の学者としての御仕事については今更いうまでもないことながら,これらの記事のすべてが先生の「偉大な人間」としての生き方に感激して書かれた記事である点に,我々の喜びの一層大きなものがある。先日の朝日新聞の日曜版には「日本のシユワイツエル」との讃辞が述べられて居り,最近の東京新聞や大法輪の記事にも先生の人間性に深く打たれた,とのことが書いてある。先生が何によつてこのような境地に達せられたか,即ち先生の「精神の遍歴」については時々先生から伺つたこともあるが,今度の放送では「衆生の恩」ということを度々口にして居られた。先生はシユワイツエルのような宗教家ではないが,先生が平生,宗教というものに心からの尊敬を捧げて居られたこと,殊に御母堂が熱心な仏教信者であられたことを伺つたことがあるが,先生の信念は正しく宗教家のそれであると思われる。
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