談話室
アルベルト・シユワイツエル病院にて
高橋 功
pp.1183-1184
発行日 1959年8月15日
Published Date 1959/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206733
- 有料閲覧
- 文献概要
私はDr.Albert Schweitzerに招かれて, Lam-bareneの病院に勤務している。まだ4カ月足らずの期間だが,私の担当した眼科領域の経験をお伝えしよう。
まずトラコーマが殆んどないことは私の意外とするところである。当地の黒人達は,朝といわず,昼といわずオゴエ河で水浴している。しかもこの河で彼等は大小便を処理し,洗濯もすれば,食器も洗うのである。うがいもすれば顔も洗う。とすれば汚染された河水からの結膜感染は当然考えられていい。そして又Schweitzer病院では患者の給食は,手術,伝染病,精神病などの一部に限つて行い,一般入院患者の食事は付添の家族が思い思いにやつている。炊事場のついている病棟もあるが,一般の病室の軒下で,大きな石でかこつて生木をもやして炊事をしているので,食事時は炊煙が立ちこめている。それは結膜を刺激するにちがいない。又ここには,電燈がないので石油ランプである。照明の不完全も結膜と限らず,眼にいい影響は与えないはずである。こういう色々な悪条件にもかかわらず,ここにはトラコーマは殆んどない。トラコーマは生活程度の低い,未開の地に多いという考え方はここで壁にぶつかることになる。トラコーマに限らず結膜炎も少い。壮年者の80パーセントまで淋毒に犯かされているといわれているこの地に膿漏眼が殆んどないのも意外である。要するに病原体に対する結膜の抵抗が強いということになる。
Copyright © 1959, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.