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I.まえおき
治療界において,最近著しい進歩を遂げたものの中,忘れることの出来ないのは麻酔の進歩であると思う。近来の麻酔学は手術にあたつて単に患者の疼痛を除くにとどまらず,術者側にとつては安心して十分に手術に専念出来る様に先ず患者を安心させ,つづいて苦痛なく手術を受けられる様にすると共に,更に術後の安静をも保たれる様にすることが主目的とされている。即ち,患者を完全に無痛状態におき,体動や疼痛又は苦痛の訴えによつて手術者の平静な態度や冷静であるべき判断を迷わせない様にし,必要な手術操作を完了出来る様にすることが必要である。
従つて,第1に眼科手術の多くは局所麻酔でも出来るということは,完全な麻酔状態で手術をする必要がないということにはならない筈である。例えば局所麻酔であれば術中適宜に患者と言葉が交されるから,患者の意識状態もわかり,時には手術効果の測量も出来るから便利であるということは,近来の麻酔学の理論からすれば,之を以て満足することは出来ない。その様な考え方での麻酔は多分に患者に依存し,その犠牲を払わしめていることにもなる。第2に眼科手術の多くは極めて簡単に(他科の手術に比して)行えるから,手術は恐れるに足らないものであるという手法で患者を納得させて,局所麻酔のみにたよつて手術を行う慣習があり,眼科教科書の多く(眼手術学専門書さえ)が,手術学における麻酔の項目には局所麻酔法のみを記載している。
Recently ophthalmological operations have been performed under general anesthesia. Outline of general anesthesia in ophthalmology, and examples were shown in this paper. Importance of general anesthesia in this field was emphasized.
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