Japanese
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日本トラホーム予防協会会誌
和歌山県に於けるトラコーマとその対策
Trachoma countermeasure in Wakayama Prefecture
田中 正好
1
Masayoshi Tanaka
1
1和歌山県衞生部予防課
1Preventive Sektion, Wakayama Prefecture
pp.97-102
発行日 1957年12月15日
Published Date 1957/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206180
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Ⅰ.はしがき
トラコーマ(Tr.)は本県ではいかんながら公衆衛生の問題である前に,いまだなお社会問題である。Tr.蔓延の様相や,各地に残つているその淫浸地区の存在が有力に物語つているように,それは単なる経済的なもの,或は現在における貧困の問題ではなく,その貧困をもたらした封建的な社会組織,かつ,その長い歴史的な被圧迫に起因する不良な環境と非衛生的な風俗習慣の綜合的な結果なのである。従つて,今までのTr.淫浸地区に対する対策が屡々失敗に帰したのも,その本質的なものゝ解決が伴わなかつたためであるし,終戦後の混乱にさいし急激に増加したTr.が,今や著しく減少を示してきたことも,有効な抗生物質の出現もさる事ながら,その蔓延の基盤が浅く,その後の社会の安定と生活の余裕がその成果を容易にしたものと見ることが出来る。Tr.感染因子に関する数々の分析も,要するにこの点に集約せられてくるのであつて,Tr.対策における医師の関与もおのずから制限せられたものに止まらざるを得ないものであつて,むしろ問題の根源はその背後にひそんでいることが多いのである。
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