日本トラホーム予防協会会誌
私共のTrachoma研究に対する鈴木教授の批判に応える
筒井 純
1
Jun Tsutsui
1
1岡山大学医学部眼科学教室
1Dept. of Ophth., Okayama Univ. Medical School.
pp.17-18
発行日 1957年5月15日
Published Date 1957/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206035
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最近鈴木数授の論文,殊に臨床眼科トラエーマ特集号1)中に我々のTrachoma研究に関する批判が色々と述べられているが事実と違う点もかなりあるので訂正させて戴きたいと思う。
先ずTr.の発病が急性か慢性かと云う事に対する私の態度をはつきりさせて置きたい。私はどちらかと云えば急性説に近い考えを持つている。けれども総てのTr.は所謂臨床的に急激且重篤な症状で起ると云うのではない。これは三井,青木,国友,上野等急性発病論者とみなされている人々も共通の概念を持つている。医学的に他覚的に見た初発症状が急性炎であると云うのである。患者の主訴を基にして知らざる中に起ると云うよりは,医学的には大分進歩した疾病の表現方法であると思う。私はTr.の発病症状に重軽の存する事は認めているし,どの様な条件の場合にはinsidiousと云え又suddenと云えるかを研究しているのであるが,今日迄私の得た結果では急性の方の色彩が濃厚である。けれども又稀ではあるが再感染以後にはchronicな状態で発病したTr.の実例もあり得る事を報告してある。従つて単純に急性発病論者,慢性発病論者と相反する言葉で分類する事がどうかと思う。お互に他を全く否定し去ろうとする事が此の問題の解決を長引かせるのではないかとさえ考えられる。
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