私の経験
—シンポジウム—眼科領域より見る健保諸問題
壺井 忠彦
pp.1351-1356
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410205834
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従来は,地方眼科学会に於てさえ,健保診療諸問題を論ずことは余り見受けられないし,或は邪道の様にもいわれ,又私自身もその様に考えておつたのである。然し,その時代はすでに移り変つた。本日当四国眼科会に貧弱なる学識経験をも顧りみず敢て私が茲に申し述べる所以は,特に地元愛媛県眼科医会の光栄ある御推挙に浴したのが主たる原因ではあるが,同時に次の様な理由も存在すると考えるからである。
即ち,周知の如く我ら日常の診療に於て,70〜80%以上は保険診療であり,殊に重症であるもの手術も要するもの,特殊投薬や注射を心要と考えられるもの,特に経過の永いもの或は予後の不良なもの等,凡そ治療費の多量を要するものは殆んど総てが保険となりつつあり,然もその診療内容たるや厚生省のいう如き一定の枠内診療,制限診療である。然し,医療である以上,本来の姿として何処までも良心的でなければならないし,又道徳的でなければならない筈である。即ち,学会に裏付けられた学理的にもとづき,合理的で,且進歩的であらねばならないし,飽迄も対社会的に,又対個人的に最良のものである様心がけねばならない筈である。然るに最近自他共に強いられてか,或は無意識的にか,ややもすればその根本理念が曲解されつつあり,然もそれが他科よりも眼科診療に於てより甚だしい場合が往々見受けられるからである。以下最近に於ける健保諸問題について,いささか眼科面より考えてみることとする。
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