Japanese
English
特集 第15回臨床眼科学会号(2)
眼底疾患に対するATPの使用経験
Effect of the A.T.P. on the diseases of the retina.
樋渡 正五
1
,
大戸 建
1
,
斎藤 紀美子
1
Shogo Hiwatari
1
,
Ken Oto
1
,
Kimiko Saito
1
1日本医科大学眼科
1Department of Ophthalmology, Nippon Medical College
pp.293-296
発行日 1962年3月15日
Published Date 1962/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202454
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1928年LohmannによりATPが筋肉内に生理的に多量に存在し,かつ筋活動のエネルギー源となることが知られて以来幾多の発表が相ついでいる。すなわち眼科以外では,1)脳神経疾患には脳血流量の増加による組織呼吸,脳葡萄糖消費の促進に,2)筋肉疾患には直接筋肉のエネルギー源となり,罹病筋の燐酸系の賦活に,3)循環器疾患には血圧降下と血管拡張作用により,4)新陳代謝系疾患には血糖降下作用を示し,5)その他肝腎疾患などにも広く応用されるにいたつた。
眼科領域では眼精疲労および調節衰弱筋に対して村山,正田,人野田,久保木らが,外眼筋麻痺に対しては桑原,伊藤,中尾らが有効なことを報告し,角膜疾患には水川,山田らが有効なことをのべている。眼底疾患では伊藤の多発性硬化に対する使用報告,服部の視束萎縮,網膜出血に対する経験,山根の中心性網脈絡膜炎,網膜色素変性症その他に対する症例報告があり,また牧内の眼球鉄銹症えの効力がのべられたほか,実験的には山根が家兎に対してATPとV.B1の併用投与によるERGのb・c波えの影響を,小島らはATP結膜下注射による網膜のPAS反応,酸性アルカリ性フォスファターゼやコハク酸脱水素酵素などの消長を報告している。
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