特集 眼科臨床の進歩Ⅲ
色覚
色の調和に就て
松尾 治亘
1
1東京医大眼科教室
pp.624-631
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202196
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近年我国に於てもColor dinamics或はColorconditioningという事が喧伝され,且つ一般に普及されつゝある。之は主に工場,車輌,船舶,病院,学校等の室内或は機械設備,標識等に一定の彩色を施して,それに依つて能率上昇,危害防止を計る事を目途とし,更に敷衍されて実際生活にも及ぼうとしているものである。
元来,色彩調節は機能主義的であつて,作業能率の上昇,疲労感の減少等の生理的,心理的影響に基いたもので,その理論的,実際的発展は主として色彩工学,色彩科学の領域に於いてなされたものである。従つて,元来美術,芸術の分野から述べられる色の調和,美感というものは,色彩調節の領域では従のものとされ,その主要な部分を占めていない。薙に色彩調節と色彩調和の遊離が指摘されている。併し乍ら,色彩管理に於いて機能主義的或は機械主義的といつても,作業者に及ぼす影響は結局その作業者個々の主観に基く色彩配色の受取り方にのみ,その根本があるのであるから,その配色に依つて惹起される感覚として,視力,対比,順応等の問題と共に美しさという事が当然含まれるべきである。且つ,之が作業者の能率,疲労,その他に生理的心理的影響を及ぼすと考えられる。
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