銀海餘滴
血清肝炎
pp.619
発行日 1954年5月15日
Published Date 1954/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201879
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伝染性肝炎と甚だ類似するが,今日異ると考えられる疾患に血清,血漿の注射や輸血または予防接種後に人から人へ黄疸が伝染することが確認されて,血清肝炎同種血清黄疸輸血後肝炎などと呼ばれており,最近可成の報告をみ私どもも経験している。このヴイールスは伝染性肝炎ヴイールスと異るものと考えられ,血液,血清中にのみ存在し糞便中には証明されないで,非経口的にのみ伝染し発病方法の差異を除いては伝染性肝炎と臨床的に区別することが出来ないが,後者が急性に発病し,発熱と系統的疾患の症状を呈するのに較べ,血清肝炎は潜伏期が長く平均60日で,発病が緩徐であり,体温は屡々病気経渦中正常で,前駆期以後の臨床経過は両者とも同じである。治療は伝染性肝炎に対すると同一であるが,死亡率は流行性肝炎のそれより高いことは注目に値し,またγ—グロブリンによる予防も効果がない。
予防については多数の人の血漿または血清を混合して使用することはそのすべてを汚染する可能性があり,単一血漿または血清が危険が少ない。また消毒の不完全な注射器具から感染するので注意が必要で,これは160C1時間の乾燥滅菌で防がれる,個人毎に消毒した器具を使用し,連続的の注射をさけるのが必要である。
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