特集 眼科臨床の進歩Ⅱ
コンタクトレンズの臨床
水谷 豊
pp.718-723
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201625
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Ⅰ.
コンタクトレンズは,光學的に正しい屈折面を有しない角膜表面に接して用うる,透明な薄い硝子又は合成樹脂製のレンズで,之に依つて,新しい正しい屈折面を作ろうというのが主目的である。この考えは,已に1801年Thomas Youngが,水を滿した硝子管にレンズを取付けて,角膜の彎曲の光學的な缺點を除こうとして,彼自身の眼に應用したのを始めとし,1827年英國のRoyal天文學者のSir John Herschelが透明なゲラチン物質を滿した,半圓形のレンズの使用を提唱しており,1887年には,Saemischの依頼を受けてF.E.Muellerが,眼瞼癌に依る兎眼性角膜炎の豫防のために,薄い硝子の眼盃を作製して患者に装着したところ,うまく適合して,20年間患者の生存中使用可能であつた。翌年A.E.Fickは,家兎眼及び人屍體の眼から石膏の型をとり,これを自身の眼に装着して研究した,其後August M-ueller(1888),D.Sulzer(1892),W.Stock(1920),J.Dallos(1932)等の研究がなされたが,いずれも,臨床的に充分應用する迄には到らなかつた。
戰時中米國では,プラスチックエ業の發達と共に,硝子に代る合成樹脂製のコンタクトレンズの研究が新しく生れ,Obrig, Feinbloom等が盛んに新しい型のレンズを考案,試作して漸く臨床的應用に症例を重ねるようになつた。
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