綜説
多發硬化とはどんな病氣か?—主に視束症状を中心に
桑島 治三郞
1
1東北大分院眼科
pp.733-738
発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201280
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もし脊髄癆に伴つた單純視束萎縮が例えば驅梅療法で輕快しないからといつてこの視束症状を梅毒ないし脊髄とは無關係だと主張する人がありとすれば,その人は梅毒または脊髄癆の何ものかを知らないのだと批評されてもしかたがないと思う。脊髄癆と單純視束萎縮に關する限り醫學常識のひとつとして今日このようなことは誰も問題にすることさえしないが,おなじような關係にたつ多發硬化と球後視束炎との相關については古くからわが國で敢て上のようなことがいわれてきた。この兩者の關係が密接不離であることは今日歐米の醫學常識ともされているが,わが國で今なおこれが否定視されているそもそもの根據は,かつて歐米でもそうであつたように多發硬化という疾患が企圖振顫,斷綴言語および眼振のいわゆるCharcotの3主徴を診斷指標とする古典的見解のもとで考えられた特殊な疾患として,臨床的價値の少い,極くまれな,然も特殊な人種にのみ好んで見られるものとされた概念のもとに,わが國では本症の存在が始めから否定視されたことに由來している。
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