臨床實驗
再び近視と齲齒との關係に就て
保坂 明郞
1
1東京醫齒大眼科
pp.451-453
発行日 1951年7月15日
Published Date 1951/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200896
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言竝に文献的考察
近視の本態が眼軸延長であるか,水晶體屈折力の増加に依るかは議論のある所であるが,大塚教授は兩者共に關係し,只眼軸延長が主で,水晶體屈折力の増加が從であることを立證された。眼軸延長が如何なるメカニズムで起るかは今後の問題であるが,眼球後極部の鞏膜が何等かの理由に依つて薄弱となり伸展せられることは古來考えられかゝる原因として全身的或は局所的のacidosisがその1として擧げられている。一方齲齒の發生原因として口腔内部の條件竝に全身的素因が考慮され,何れにしてもエナメル質の脱灰が行われて發生すると言われている。そこで近視と齲齒が何等かの關聯があるであろうとは誰しも考える所で以前より種々なる人々に依つて報告されている。即ち久保田三郞氏は女學生405名に就て近視者に齲齒多しとは言えないが,近視者で齲齒を有する者は多少進行度大であると言い,林勝三氏は朝鮮學童1195名に就き調査し,近視者には齲齒の發生が多いと述べ,柏谷三郞は龍川の邦人及滿人學童2000名に就いて検しacidosisの結果として近視及齲齒を多發することを認め,郡山勇氏は京阪地方の學童3813名,朝鮮學童2514名奄美大島の學童2798名に就いて調査し,後2者では關係あり,検査總員9152名に就いても近視者に齲齒の多いことを述べている。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.