〔Ⅰ〕原著及臨牀報告
音響の光神竝に色神に及ぼす影響に就て
中野 公正
1
1九州帝大眼科
pp.113-119
発行日 1947年9月20日
Published Date 1947/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200202
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第一章 緒論
都市醫學或は産業醫學上,騒音が問題にされる様になつたのは最近20年來の事であるが,今日の如き時局下では其の研究は益々必要となつてゐる。殊に其の眼機能に及ぼす影響に就ては全く不明のものが多く殘されてゐるからである。
既に古くNussbaumerは聽神經の興奮により色彩を自覺する事を報告した。Urbantschitsch(1888)は音覺の喚起された場合には色覺の亢進を來たし,音刺戟によりて視野は明るくなり,不明瞭或は全く認め得られない文字を讀む樣になると言つてゐる。Haenel(1919)も音響は視覺を興奮せしめて光覺を感ぜしめる事を報告し,Lazarev(1927)は周邊視の際光覺は音響によりて増強せられると言つてゐる。又Kravkov(1930)は白地に黑の4角形の視標を以てする視力は音響によりて増加し,黑地に白の視標を以てする視力は惡くなつた事を報告し,田村(1933)は之を追試し音響によりては白地に黑環及び,黑地に白環何れの場合にも視力は減退すると述べ,藤本(1935)は其の被檢者の1名に於ては黑地に白標,白地に黑標の何れの場合にも音刺戟によつて視力減退し,他の1名に於ては視力の増進するを見,音響と視力との間には一定の規則性を見出し得ないと言つてゐる。
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