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特集 基礎研究から難治性眼疾患のブレークスルーをねらえ
網膜色素変性
Retinitis pigmentosa
池田 康博
1
Yasuhiro Ikeda
1
1九州大学大学院医学研究院眼科学分野
pp.1986-1992
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103483
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はじめに
網膜色素変性(retinitis pigmentosa:RP)は先天性遺伝性の疾患で,人口5,000人に1人と発症頻度が高く,日本には約3万人の患者がいると推定されている。夜盲から始まり,徐々に視機能が低下して最終的には失明に至るため,患者のQOL(quality of life)は病気の進行とともに著しく低下する。これまでに数多くの治療的な試みがなされているものの,明らかな有効性を示し得たものはほとんど存在しない。眼科領域において未だ有効な治療法が確立されていない難治性疾患の1つであり,わが国の中途失明原因の第3位となっている。したがって,網膜色素変性患者に対する日常診察は,生活指導やリハビリなど患者の現有視力を有効に利用するための情報提供などといったケアが中心となっているのが現状である。
この状況を改善するために,基礎研究ならびに臨床研究が近年盛んに行われている。筆者が眼科医になった15年前,網膜色素変性は不治の病とされ,患者には絶望感を与え,眼科医からも敬遠されていた。筆者もこの病気を専門にするようになろうとは夢にも思っていなかった。
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