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症例
患者:56歳,女性
主訴:両眼の異物感,眼痛
現病歴:1年半前から両眼の異物感を自覚し,近医を受診した。人工涙液,抗菌薬およびステロイドの点眼による治療を受けたが,症状が改善しないため,精査・加療目的で当院を紹介され受診した。
眼科既往歴:特記すべきことはない。
全身既往歴・家族歴:特記すべきことはない。アレルギー,アトピー素因はなかった。
初診時所見:視力は右0.5(1.0×+1.00D()cyl-1.00D 160°),左0.3(1.2×+1.00D()cyl-1.75D 180°)で,眼圧は右9mmHg,左9mmHg(非接触型眼圧計)であった。細隙灯顕微鏡検査では,角膜は透明平滑で前房内に炎症所見はなかった(図1a)。両眼の上方結膜に軽度の充血を認めたが,上眼瞼結膜の炎症所見および乳頭増殖は軽度であった。フルオレセイン染色では,角膜には点状表層角膜症や上皮欠損などの異常所見はなかった(図1b)。一方,両眼の上方結膜にはフルオレセインで染色されるステイニング所見を認めた(図2a,b)。中間透光体には初発白内障がみられたが,眼底には異常所見はなかった。Schirmer試験は第Ⅰ法および第Ⅰ法変法で右2mm,左1mmで,涙液メニスカスは軽度の低下がみられ,涙液層破綻時間は両眼ともに4秒以内に短縮していた。
治療・経過:両眼の上方結膜の充血および球結膜の肥厚,ステイニングの所見より,両眼の上輪部角結膜炎と診断した。本症例の病因は,涙液の質的な機能低下により惹起された上方結膜における涙液分布の不均衡に基づくものと考えられた。治療は,人工涙液およびステロイドの点眼による保存的治療を行ったが,上方結膜の充血は改善せず,自覚症状も軽快しなかった。そこで,涙液滞留の増加および涙液分布の改善を目的として両眼の涙点プラグ挿入術を施行した。涙点プラグの挿入により涙液メニスカスが増加し,両眼の上輪部の結膜ステイニングが縮小した。その後,人工涙液およびステロイドの点眼を中止し,油性眼軟膏点入のみの治療を継続することで両眼の上方結膜のステイニングは消失し(図3a,b),自覚的な異物感や眼痛も軽快した。
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