特集 網膜硝子体診療update
Ⅳ.注目の疾患
4.網膜色素変性
人工視覚
坂口 裕和
1
1大阪大学大学院医学系研究科感覚器外科学(眼科学)
pp.332-335
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102515
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はじめに
網膜色素変性は遺伝疾患であり,罹病率が4,000人に1人と,厚生労働省の定める特定疾患のなかでも患者数が多いものの1つである。視覚障害の原因疾患としても第3位を占めている(厚生労働省難治性疾患克服研究事業,網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班平成17年度班会議報告書)。視覚障害原因第1位の緑内障,第2位の糖尿病網膜症に対しては薬物治療,手術治療が開発されており,視力維持,視力回復の可能性があるが,網膜色素変性に対しては現在のところ有効な治療方法は皆無であり,この遺伝疾患では,時間経過とともに視野,視力が障害され,最終的に失明に至る。典型例では,まず,周辺部視細胞の障害に伴い,周辺視野が狭窄し,細胞障害が黄斑部にまで及ぶと,最終的に失明に至る。こういった状況から,進行を予防する方法,治療方法の開発が急務と考えられ,そのための研究が一歩一歩進んではいるが,一朝一夕にはいかないのが実状である。
人工視覚とは,網膜色素変性などの疾患により,強度の視力低下を生じた症例を対象とし,人工的に視覚を再現しようとするものである。障害された視細胞を治療し,再生あるいは賦活化させて視力を回復させようとするものではないが,現時点ではより現実的な対処方法かもしれない。本項では,人工視覚の実際を述べ,わが国独自の人工視覚システムについて付け加えたい。
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