特集 網膜硝子体診療update
Ⅲ.手術治療update
新しい眼内組織染色法
江内田 寛
1
1国立病院機構九州医療センター眼科
pp.176-181
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102481
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はじめに
硝子体手術における近年のエポックの1つに,2000年にKadonosonoら1)やBurkら2)により相次いで報告されたインドシアニングリーン(ICG)による網膜内境界膜(ILM)の術中染色がある。これら各種染色剤を手術補助剤(アジュバント)として用いた術中染色は,元来手術中に見えなかった組織を可視化することで,より確実かつ安全な手術の実施が可能になり,手術成績の向上にも寄与している。近年海外ではこれら術中染色を併用した硝子体手術を総称し“chromovitrectomy”と呼んでいる3)。
本法は有用である反面,いくつかの問題点も存在している。従来より,網膜内境界膜における術中染色には主にインドシアニングリーンとトリパンブルー(TB)4,5)が用いられてきた。しかしながらその後,それらの網膜に対する組織障害や6~8),臨床研究においてもその組織毒性に起因すると考えられる合併症などが相次いで報告された9~11)。したがって,内境界膜,黄斑上膜や硝子体などの十分な染色性を有する安全性の高いアジュバントの開発と臨床応用は,この分野における重要な課題であった。本項ではインドシアニングリーンとトリパンブルーを除き,これまで報告されている開発中のものも含めた各種染色剤について,それぞれの特徴や染色の実際について紹介する。
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