特集 網膜硝子体診療update
Ⅱ.非観血的治療update
糖尿病黄斑浮腫に対する薬物療法
澤田 浩作
1
1大阪労災病院眼科
pp.118-123
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102468
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はじめに
糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)は,糖尿病網膜症の視力にかかわる重要な合併症の1つであり,治療の際にその対応に苦慮することが多い。
糖尿病黄斑浮腫に対する薬物治療の歴史としては,1980年代から抗血小板療法としてアスピリンなどの抗血小板薬の内服が行われていた。しかし,少なくとも抗血小板療法は糖尿病黄斑浮腫を速やかに抑制する効果はなく,90年代初頭のEarly Treatment Diabetic Retinopathy Study Research Group(ETDRS)の報告では,アスピリンの網膜症進行抑制効果は否定的なものと結論づけられている1)。
その後2000年代初頭には,ステロイド薬であるトリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonid:以下,トリアムシノロン)の眼局所投与2)が登場した。これは,局所投与という簡便性から広く行われ,一定の効果が得られることがわかってきている。
また,ごく最近では糖尿病網膜症に深く関与しているとされる血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:以下,VEGF)をターゲットとした,抗VEGF抗体(ベバシズマブ:アバスチン®)の硝子体内投与の有効性が報告され,注目を集めている3)。
本項では,現在まで多数の施設で行ってきたトリアムシノロンの効果をまとめるとともに,トピックスとしてベバシズマブを用いた糖尿病黄斑浮腫の薬物治療に関しても,現在まで明らかになっている知見を述べていく。
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