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われわれ眼科医が日常診療において経験する「眼の病気」には,眼科だけの守備範囲で診断から治療までが完結するもののほかに,臨床他科との連携によって診療を進めるべき疾患が多数存在する。それらのなかには糖尿病などの代謝性疾患やサルコイドーシスのような炎症性疾患などのように比較的診療頻度が高い疾患もあるが,非常に稀な疾患も多数存在する。眼科専門医として眼科診療に携わることになれば,臨床他科の医師からそれらの疾患に対する眼科的見地に立ったある程度の意見を求められることもある。しかし現実問題として眼科固有の疾患をもつ患者の診療に多くの時間を割いている一般眼科医にとっては,臨床他科領域との関連で眼疾患を網羅的にレビューする時間を見つけることはきわめて困難ではないかと危惧される。また,眼科専門医指向者にとっては「臨床他科との連携」は眼科6領域の研修とともに必須の研修項目となっているため,眼科専門医試験に臨むにあたってはこの分野の学習は必要不可欠となる。このような状況に的確に対応できる簡単な教科書のような書物が欲しいと筆者は思っていた。そうすれば外来の診察室においてすぐに必要事項を調べることができるからである。
このたび「臨床眼科」2007年増刊号として「眼科専門医に必要な『全身疾患と眼』のすべて」を企画した。これは前述のように,日進月歩の医学に対して,ともすれば眼科日常診療の範囲内に自分自身を埋没させてしまい,「眼しかわからない」または「眼しか診ない」と揶揄される眼科医となってしまい,臨床他科の医師との情報交換に支障をきたすような事態に陥るのを避けるため,臨床全科とはいわないまでも,少なくとも眼に関連した全身疾患に対する現時点での基本的な知識をまとめて一般眼科医に提供しようというのが目的である。項目立ては眼科専門医試験の出題基準に準拠したので,眼科専門医試験の「全身疾患と眼」に対する試験対策としても十分活用できるものと思っている。各項目の執筆は,多少なりともその分野の症例の診療経験のある,あるいはその分野に造詣の深い新進気鋭で現在活躍中の若手ないしベテランの眼科医の先生にお願いした。それぞれの項が大変密度の濃い内容に仕上がっており,お忙しいなかご執筆いただいた各先生方にはこの場をお借りして御礼申し上げる。
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