連載 あのころ あのとき 36
眼科外来処置台物語
林 文彦
1
1研英会林眼科病院
pp.1786-1788
発行日 2003年12月15日
Published Date 2003/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101510
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はじめに
「発明・発見ものがたり」の原稿を気楽に引き受けてから,さて何をテーマにと考えてみた。白内障手術に関しては,手術用顕微鏡の導入に始まって,超音波吸引手術や眼内レンズなど,一応わが国の事情に先駆けていろいろやってきたつもりであるが,いずれも欧米の追試かわが国への普及にいささか貢献したに過ぎないようである。喜寿ともなって改めてわが眼科人生を振り返ってみると,学会や医会での気張った仕事よりも,むしろ手術者周りの工夫やビデオ,パソコンの導入など,ささやかな身の回りのアイデアが私の身上だったような気分である。
数年前,学会の器械展示場を歩いていたら,あるブースの前で足が止まった。日本の代表的な椅子製造会社の製品展示である。私が昔から使っているような椅子があるので懐かしく眺めていたら,若い係員が寄ってきて,「この椅子は大変便利にできていて,狭いビル内の診療所でも手術や処置に盛んに使われていますよ」と説明して,起こしたり倒したりしてみせてくれた。「フンフン」と頷きながら聴いていて,いまさらながら40年の歳月の移ろいを噛みしめていたのである。
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