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はじめに
術後眼内炎は,いうまでもなく,あらゆる手術合併症のうちで最も避けなければならない合併症であり,万が一発症した場合には可及的速やかに対応しなければならない。発症すればまず抗生物質投与を行い,無効なら硝子体手術,という治療の流れは一般に理解されていると思われるが,急性発症する強毒菌による眼内炎の場合には,時に経過観察の1~2日で予後不良へと至らしめるほどの著しい不可逆性変化をきたすことがある。しかし一方で,早期に適切な処置が施されれば良好な予後が得られることも多く,早期発見して的確な治療法を選択・実施することの重要性は極めて高いといえる。
白内障術後眼内炎は,早期眼内炎と晩発性眼内炎の2種類に分類される。起炎菌は,術後早期眼内炎ではグラム陽性のブドウ球菌や腸球菌,グラム陰性の緑膿菌,晩発性眼内炎では嫌気性菌のPropionibacterium acnesによるものが多い3,5~7)。それぞれ,睫毛や涙器などから手術時に眼内に迷入することにより発症すると考えられるが,眼内レンズに付着したP. acnesが眼内レンズと後囊の間に潜伏感染した場合に晩発性眼内炎が生じると考えられている9~11)。
近年,米国で行われたEndophthalmitis Vitrectomy Study(EVS)1)はわが国でも注目され,白内障術後眼内炎を論じる場合に頻繁に引用されている。ここでは,抗生物質の投与や硝子体手術の効果に関する非常に重要な見解が示されている1,4)。このstudyはわれわれが行っている治療法と単純に比較検討することはできないが,非常に多数例の検討であり,術後眼内炎の治療を考えるに際してその内容・結果を知っておく必要はあると思われる。表1にEVSの結果を簡単に紹介するが,プロトコールの内容など詳細は文献で確認していただきたい。
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