特集 ベーチェット病研究の最近の進歩
ベーチェット病の臨床像
川島 秀俊
1
1さいたま赤十字病院眼科
pp.1312-1316
発行日 2003年8月15日
Published Date 2003/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101346
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
ベーチェット病は,トルコの皮膚科医であるBehçetが,口内アフタ,外陰部潰瘍,眼炎症の三主症状を呈する患者を1937年に報告1,2)したのが最初とされている。しかし実はそれをさかのぼること7年前,ギリシャの眼科医Adamantiadesが,同じような三主症状とさらに関節症状を伴う患者の報告をしていた3)。このような経緯から,1960年代には,本疾患をAdamantiades-Behçet diseaseと呼ぶべきとの論点が展開された状況も認められるが,ベーチェット病(Behçet's disease)という疾患名がいつともなく定着し,今日に至っている。
本疾患は,その国際的分布が,アジアから地中海地域のシルクロード沿いに多く発症していることから,「シルクロード病」ともいわれることはよく知られている。HLA-B51とベーチェット病との強い関連性は,microsatellite marker(HLA-B遺伝子近傍)を用いた近年の分析でも,さまざまな人種において再確認されている4)。本邦での1991年の時点での患者総数は推定1万6千人であり5),新規発症患者は減少傾向にあるものの,累積患者数は増えている。調査研究班発足当初,すなわち,成人の後天的失明の約12%をベーチェット病眼疾が占めていた当時と比べると6),幾種類かの新たな治療薬剤が導入されはしたが7),本疾患に対する治療成績はいまだ満足のいくものではなく,今後さらなる展開が期待されている。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.