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はじめに
ウイルス性網膜炎のなかで硝子体手術治療が有用な疾患として,急性網膜壊死(acute retinal necrosis:ARN),進行性網膜外層壊死(progressive outer retinal necrosis:PORN)およびサイトメガロウイルス網膜炎(cytomegalovirus retinitis:CMVR)が挙げられる。進行性網膜外層壊死およびサイトメガロウイルス網膜炎はエイズなどの免疫不全患者の合併症として知られており,欧米においてはこれらに対する硝子体手術の報告は多数みられるが,わが国では未だ患者数は多くないようである。
急性網膜壊死は1971年に浦山ら1)によって初めて報告された。彼らは,高度な炎症のあと網膜に無数の裂孔が生じ,自然経過では全例が網膜剝離を発症しほぼ失明に終わるとしている。その後の研究で急性網膜壊死はヘルペスウイルスの網膜感染が原因であることが明らかにされた。したがって,急性網膜壊死の治療はヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬治療が第一義的に重要である。しかし薬物治療のみでは頻度の高い合併症である網膜剝離を抑制することは難しいため,硝子体手術が治療成績の向上に有用である場合がある。
近年,手術機械と手術手技の進歩によって低侵襲の硝子体手術が可能になった。急性網膜壊死の治療においても,過去には手術を躊躇していた炎症期に積極的に硝子体手術を行うことによって病変の拡大を止め,炎症を抑制し,網膜剝離を予防するとの報告もみられる2~4)。本稿では,炎症期に硝子体手術を行うことによって治療成績向上が見込まれる急性網膜壊死に対する手術適応および術後管理などについて述べる。
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