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はじめに
岐阜大学医学部附属病院は2004年6月1日より旧病院から3km離れた場所に移転し,当初より“インテリジェントホスピタル構想”を実現するために全面的な情報システム化が計画された。そして,紙カルテや検査フィルムなどは一切廃止し,「完全ペーパーレス化に耐えうること」「病院電子カルテとの連携が行われること」そして「開院に絶対間に合うこと」が電子カルテを導入する最低条件として挙げられた。これらの条件を開院1年前に突きつけられたわれわれは,当時電子カルテ化された病院の苦労を聞き絶望状態であった。しかし,医療情報部と病院電子カルテのIBM社および部門システムのニデック社,視野解析ソフトのビーライン社の協力により,開院2週間前にやっと電子カルテのシステムが完成した。その後,紙カルテを参照しながら電子カルテの改良を行い,2005年より目標であった電子カルテのみの運用を行っている。
一般的な眼科疾患においては,診察期間が短いため電子カルテ化されても病状の把握が比較的可能である。問題といわれていた眼底の図もペンタブレットの使用や紙に描いたものをスキャナーで読み込むことで対応が可能である。しかしながら,今回のテーマである緑内障は診断されると一生治療が必要となる超慢性疾患であり,1人の患者においても眼圧,視野,視神経の所見の経過と各種の点眼治療,レーザー治療,手術治療を組み合わせた複雑な治療の経過を把握する必要がある。この多くのデータをいくつもの次元で閲覧することは電子カルテの最も苦手とする部分である。
実際に,「病院電子カルテ」においては,他科と共通の仕様となり,SOAPの方式で文章を入力していくため,眼圧の経過や視野の経過を把握することは不可能に近い。「眼科部門システム」においては,眼科専用のテンプレートが用意されるものの,必要な項目はそれぞれのフォルダに分けられて保存されているため,各種データを時系列で一度に閲覧することは不可能である。
そこで今回は,電子カルテによる診察,NAVIS(Nidek Advanced Vision Information System)による緑内障の診療の実際と当院で導入されたビーライン社の“視野解析ソフト”,さらにNAVISにオプションで追加可能である「緑内障経過観察ソフト」について紹介したい。
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