症例
大網のdermoid cystの1例
中原 健次
1
,
酒井 伸嘉
1
,
長谷川 剛志
1
,
小田 隆晴
1
Kenji Nakahara
1
1山形県立河北病院産婦人科
pp.823-826
発行日 1990年9月10日
Published Date 1990/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904890
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われわれは稀な症例である大網のdermoid cystを経験した。患者は41歳の女性で5妊2産であり,既往歴,家族歴および月経歴は特記すべきことはなかった。現病歴としては下腹部重苦感を訴え当科を初診したが,内診にて軽度腫大した子宮に隣接して超手拳大の表面平滑な弾性硬の腫瘤を触知した。血液検査では軽度の貧血がみられ,CA125を含む一連の腫瘍マーカー検査ではIAPおよびLDH4の上昇がみられた。超音波断層法やCTを含む画像診断では,卵巣のdermoid cystが最も疑われた。以上の所見をふまえて開腹手術を施行したところ,卵巣は左側は正常で右側は軽度嚢胞状であったが,本腫瘍とは別であり,腫瘍周囲の繊維性癒着を剥離していくと,腫瘍は大網とのみつながっていた。腫瘍内容は脂肪,毛髪および軟骨様組織からなり,病理診断はdermoid cystであった。症例の報告と若干の文献的考察を行った。
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