今月の臨床 更年期・老年期医療のピットフォール
診断・治療におけるピットフォール
3.アルツハイマー病
大藏 健義
1
1獨協医科大学越谷病院産科婦人科
pp.1332-1335
発行日 2002年11月10日
Published Date 2002/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904775
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はじめに
更年期の女性では,40歳代後半から物忘れを訴える頻度が増してくる.この時期の物忘れは,大部分は正常な老化の範囲内であるが,日常生活や社会活動あるいは職業的機能に支障をきたすようだと問題とされ,痴呆の初期と鑑別しなければならない.老年期の痴呆は,アルツハイマー病(Alzheimer�s disease:AD)と脳血管性痴呆(vascular dementia:VD)とに大別される.わが国では従来,ADよりもVDの割合が高いと報告されてきた.しかし最近の報告1)ではADの割合が増加してきて,60歳以上の女性の痴呆ではADが51.7%,VDが24.6%であり,欧米での割合とほぼ同じになってきている.一方,男女比ではわが国だけでなく欧米でもADは女性に多く発病し,発生率は男性の1.7〜3倍と報告されている.また,女性におけるADの発症は卵巣からのエストロゲン分泌の永久的停止(閉経)との関連が深いことが指摘されている.
本稿では,ADの診断と治療におけるピットフォールについて,日常診療を年頭におきながら概説する.
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