連載 OBSTETRIC NEWS
緊急帝王切開—「30分ルール」を達成できるか?(1)
武久 徹
1
1武久産婦人科医院
pp.1154-1155
発行日 2002年9月10日
Published Date 2002/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904739
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- 文献概要
北米や英国では,緊急帝王切開(帝切)決定から開始までは30分以内(「30分ルール」)というのが標準的産科管理という不文律がある.しかし,例えば前回帝切後の経腟試験分娩(VBAC)例で子宮破裂が起こった場合は,30分以内に開始できても母児の死亡や罹患を防げない例が多数発生する.米国産婦人科学会(ACOG)では,VBACに関しては,「30分ルール」ではなく,“immedi—ately”という表現に変えている.「30分ルール」を達成するには院内に麻酔科チームやそのほかの手術要員が常駐しなければならず,特に日本のような国では費用の点で達成は不可能な例が多数存在するはずである.「30分ルール」は,日本では決して標準的医療ではないことが産科医療関係者以外にも認識されて欲しいものである.英国とオーストラリアからの研究で,この問題が検討されている.
緊急帝切は決定から開始まで30分と勧告されているが,この勧告を支持する客観的証拠はほとんどない.
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