今月の臨床 頸管無力症と頸管縫縮術
頸管無力症患者管理の実際
3.当院における頸管縫縮術の予後に影響する因子について—兵庫県立こども病院周産期医療センター
大橋 正伸
1
1兵庫県立こども病院周産期医療センター産科
pp.896-899
発行日 2002年7月10日
Published Date 2002/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904686
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はじめに
頸管無力症とは出血,陣痛などの切迫流早産徴候を自覚しないにもかかわらず子宮口が開大し,胎胞が形成されてくる状態とされ,流早産の主な原因のひとつである.本疾患の診断はおよそ内診所見で子宮口が1指開大した状態とするものであったが,近年,経腟超音波断層法の普及にともなって,妊娠初期より頸管の詳細な観察をすることで本疾患を早期に診断し,頸管開大の前に予防的頸管縫縮術を行うことが可能となった1〜3).本症は子宮頸部付近の筋線維やコラーゲンの異常と考えられており,子宮頸部の先天的な異常,後天的損傷,早期頸管熟化などを原因とする.比較的急速に進行することがあり,妊娠前期検診を1か月に1回の間隔で行っているため,その発見が遅れがちになる.したがって,流早産,頸管無力症,頸管裂傷,円錐切除術などの既往歴のあるものを選別し,15週頃より経腟超音波断層法を頻回に繰り返すことが肝要になる.
ところが頸管炎や絨毛膜羊膜炎などによって引き起こされる切迫流早産も頸管無力症と類似の頸管の形態的変化を示すことがあるため,とくに子宮収縮が極めて軽度である場合には絨毛膜羊膜炎の診断なしに,頸管の形態的変化のみで,頸管無力症と実地臨床的にはひとまとめに扱われてきたことが多いのではないかと考えられる.したがって本症の診断に際しては,かならず頸管炎や絨毛膜羊膜炎に対する検査も併せて行わねばならない.
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