今月の臨床 子宮内膜症治療のストラテジー
総論
1.子宮内膜症の疫学と最近の特徴
武谷 雄二
1
1東京大学医学部産婦人科
pp.1300-1303
発行日 2001年12月10日
Published Date 2001/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904489
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子宮内膜症は最近増えているのか
子宮内膜症は開腹または腹腔鏡検査などで直接病変を確認することで確定診断がなされるものであり,腹腔鏡が普及する以前,すなわち1980年代以前は,骨盤内腫瘤または卵巣癌などの子宮内膜症以外の婦人科疾患で開腹した際に偶然発見されるものが多かったと考えられる.また現在ルチーンに用いられている経腟超音波やMRIなどの画像診断が利用できない時代には子宮内膜症を事前に疑うことは極めて困難であった,またrAFS分類が提唱されたのは1985年であり,この分類法で微小(minimal)な病巣がI度として正式に認められたが,これ以前はminimalな病巣はたとえ存在したとしても病巣として認識されなかったのではないかと考えられる.これらに加え,子宮内膜症は生命予後にかかわることは極めてまれであり,以前の婦人科医の間では,疼痛を中心とする主訴に対し積極的な医学的介入をしようとする思考は希薄であった.すなわち医師にとって子宮内膜症は有効な治療薬もなく比較的関心の低い疾患であった.このような事由で時代を越えて子宮内膜症が増えたかどうかを論ずるのは困難な点が多い.また放置すれば必ず進行するものでなく,自然治癒もあり得る疾患のため医師が診断を下さなかったのか,本疾患が少なかったかを区別することは無理がある.
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