今月の臨床 婦人科医のための乳癌検診
治療の現状
2.乳癌手術の動向
田島 知郎
1
1東海大学医学部外科
pp.524-529
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904322
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はじめに
1970年代から始まった欧米での大規模臨床試験によって,手術術式の違いが予後に大きく影響しないことが示されて1〜3),乳癌根治手術の術式が近年大きく変化し,段階的な縮小化が急速に進んだ4〜6).この背景には,いま胸筋合併乳房切除術と呼称されている定型的乳房切断術を一世紀近く標準的とし,この術式に呪縛されていたことへの反省があり,一方で従来のpaternalism的な医療への反発と消費者運動を反映した術式選択への患者の参加があった.また,比較的早期の乳癌が見つかる機会が多くなり,補助療法の効果も増し,癌手術としての原則が遵守されなくても,治療成績にはあまり違いが出なくなった6).思い切った局所切除療法によってのみ,乳癌の局所コントロールと治癒可能性への期待をつないだ時代から,局所切除療法を総合的な治療戦略の一環としてとらえ,また各乳癌の個性に合わせて治療法を選択する時代に大きく変わった5〜7).
本稿では,乳癌手術の歴史的な事柄にも触れ,今後の展望につなげる.なお,わが国における過去約20年間の乳癌術式の変遷を図1に示した.
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