今月の臨床 妊娠中毒症—新しい視点から
概念と定義の変遷
1.米欧の考え方の違い
竹村 昌彦
1
,
神崎 徹
1
,
村田 雄二
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学産科学婦人科学
pp.106-109
発行日 2001年2月10日
Published Date 2001/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904242
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はじめに
妊娠中に著明な浮腫が出現し,それに痙攣発作を起こすような異常は,すでにギリシャ時代には認識され,記述されていた.このような病態に対してはその後何世紀にもわたって妊娠中毒症(toxemia)という言葉が使われてきた.しかしこの病名には,妊娠初期の悪阻なども含められており,妊娠中に特有なさまざまな症状が何らかの毒素により発生するという概念にもとづいていた.
その後,妊娠中毒症の概念はさまざまに変遷をとげながら現在にいたっている.近代にいたって,高血圧,蛋白尿,浮腫がその三徴候とされ,中毒症の概念が絞り込まれた.妊娠に伴って発生する毒素は否定されたが,toxemiaという言葉は生き残って長らく使われてきた.
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