連載 ARTシリーズ・13
男性不妊に対するARTは,原形質内精子注入法を使用したほうが成績がよいか?
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.345
発行日 2000年4月10日
Published Date 2000/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903978
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1996年の統計では新鮮自己卵ARTで,その30%に原形質内精子注入法(intracy toplasmic sperm injection:ICSI)が使用されたが,その主要な目的は精子の機能と運動性にともなう問題を改善するためである.図は男性不妊カップルに対してなされたART成功率を,ICSIを使用した場合と使用しない場合に分けたものである.ICSIを行うには少なくとも1個の卵が採取されなければならないので,1回の卵採取当たりの生存出産率(LB/retr)と1回の胚移植当たりの生存出産率(LB/trans)のみを比較した.1996年の統計では,1回の卵採取に対する成功率はICSIを使用したほうが高く,したがって男性不妊カップルではICSIを採用したほうが受胎のチャンスが良好であることを示唆している.ICSIを使用してもしなくても1回の胚移植当たりの成功率がほぼ同じなのは,一度卵が受精されてしまえばICSIは成功率とは無関係であることを示す.
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