今月の臨床 —リニューアル—帝王切開
帝切の現況
1.帝切率の推移とその背景
雨森 良彦
1
1山王病院産婦人科
pp.1232-1234
発行日 1999年10月10日
Published Date 1999/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903784
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50年前に比べると本邦も晩婚少産化が進み,「赤ちゃん」は相対的に貴重児となってきた.まかり間違って分娩でその児を失ったり傷つけたりすると,1億円訴訟にまきこまれかねない時代である.
昔は多産多死,どの家庭にも7〜8人産まれるなかで一人ぐらいの死産はあったものである.「死んだ子の歳を数える」のは日常茶飯で悲しみのなかにも諦めと許容があった.往年の産婦人科の泰斗は「初産は児を殺しても下から出せ」と帝切乱用を戒しめた.二十歳の若い初産婦を帝切してしまうと,その後6人も8人もの安産が期待できないからに外ならない.麻酔事故,出血,感染,術後イレウスなど合併症はもとより長期的にも次回分娩時の子宮破裂のリスクをかかえることになるからである.さらに既往帝切—今回前置胎盤例は,初回帝切(primaryc-section)の増加により予防できない必然から急増している.本症例では胎盤絨毛が帝切瘢痕創に侵入し癒着を起こし,再帝切時に往々にして母体に致命的な出血リスクを与え,帝切時子宮全摘(ceasarean-hysterectomy)を余儀なくされる.悲惨な例である.
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