今月の臨床 PCO症候群を斬る
治療
3.治療上の問題—OHSSへの対応
小川 修一
1
,
荒木 重雄
1
1自治医科大学産婦人科生殖内分泌不妊センター
pp.714-717
発行日 1999年5月10日
Published Date 1999/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903657
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排卵誘発や高度生殖医療(ART)における調節卵巣過剰刺激のために,HMG製剤を用いることは臨床成績の向上に欠かすことができない.その際,多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者では過剰な卵胞成熟を起こしやすい.HCG投与時に存在する直径約8〜12mmの中等大の卵胞は,HCG投与後に嚢胞化し卵巣腫大を招いたり,血管透過性作用を持つさまざまな生理活性物質の過剰産生を促し,いわゆる卵巣過剰刺激症候群(ovarianhyperstimulation syndrome:OHSS)の発症につながると考えられている1).
OHSSの治療には難渋することも多く,排卵誘発剤の投与法を工夫することで発症を予防する努力が求められる.最近では単一排卵を目的として低用量FSH療法2),FSH-GnRHパルス療法3)の試みがなされている.ARTにおいては,step up法4)やstep down法5)などが試みられている.排卵誘発剤の工夫以外にもOHSSの発症が懸念される場合には,黄体賦活に対する排卵後のHCG投与を中止したり,採卵後新鮮胚移植を中止し全胚凍結を用いることで妊娠によるOHSSの重症化を回避するなどの試みがなされてきている.その結果,重症OHSSの発症頻度は以前に比べて減少してきたが,それでも完全にOHSSを予防するには至っていない.
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