今月の臨床 性の分化とその異常—どこまで解明されたか
性分化異常の臨床
6.精巣性女性化症
小森 慎二
1
1兵庫医科大学産科婦人科
pp.76-82
発行日 1999年1月10日
Published Date 1999/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903513
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精巣性女性化症は男性半陰陽の一つの病態であり,アンドロゲンレセプターの異常によるアンドロゲン不応症(androgen insensitivitiy syn—drome:AIS)のひとつのタイプに分類される1).アンドロゲンは胎生期の男性生殖器の分化に重要な働きをもつとともに思春期以後の男性の二次性徴の発現と精子形成促進作用をもっている2).そのために標的臓器でのアンドロゲン作用が障害されると種々の程度の男性化障害が起こる.アンドロゲン不応症は,表現型の程度により,大きく完全型と不完全型に分けられる.完全型は,染色体は46,XYの男性核型であるにもかかわらず,完全な女性の表現型を示す.表1にその特徴をまとめた.完全型アンドロゲン不応症の発生頻度は,男児出生2,000〜64,200に1例と報告されている3).本邦では,13万人に1名という報告がある4).不完全型は,表現型が完全な男性型を示す男性不妊症のものからさまざまの分化の程度に分かれており,Quigleyらは,図1に示すようなアンドロゲン不応症の程度を7段階に分類している2).
本稿では,精巣性女性化症を含むアンドロゲン不応症(以下,AISという)について,アンドロゲンレセプターの遺伝子異常を中心にわれわれの症例も含めて解説する.
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