今月の臨床 難治性細菌感染症
婦人科の難治性感染症
1.術後MRSA感染症
菅生 元康
1
1長野赤十字病院産婦人科
pp.914-916
発行日 1998年7月10日
Published Date 1998/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903330
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の周手術期感染症は,産婦人科をはじめとした外科系臨床科にとって重大な臨床テーマとなっている.われわれは1970年に卒後研修を開始したが,ちょうどそのころから第一世代のセフェム系抗生剤が各種感染症や術後感染予防によく用いられるようになった.それ以前はクロラムフェニコール,アミノグリコシド,テトラサイクリン,マクロライド,ペニシリン系抗生剤,など多彩な抗菌剤が使用されており,また内服抗菌剤としては,スルファメトキサゾールなどのサルファ剤も少なからず使われていたと記憶している.ところがセフェムの登場以後それら抗菌剤は急激にセフェム剤と合成ペニシリン剤,いわゆるβラクタム環を持つ抗生物質が大多数を占めるようになった.
帝京大学の藤井は,1984年に発表した論文の中で,太平洋戦争後の40年間の日本における抗生剤の使用量の推移を,厚生省のデータを基にして詳しく解説している1).それによると1975年以後ペニシリンとセフェム剤の急速な増加が認められ,とくに1980年以後はセフェム剤の増加が著しい.βラクタム剤は,効果や安全性の面から使いやすい薬剤として,その後現在に至るまで長期間汎用されてきた.その結果が今日のMRSA outbreakの基を作ったと考えられるが,当時われわれは現在のような状況になることをまったく想像していなかった.
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