今月の臨床 産科と凝固異常
産科診療と凝固異常
1.抗リン脂質抗体症候群と不育症
佐川 典正
1
1京都大学大学院医学研究科器官外科学婦人科学産科学
pp.284-287
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903198
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自己免疫疾患合併妊娠では,流産や子宮内胎児死亡(IUFD)を繰り返すことがあるが,このように妊娠は成立するが生児が得られない状態を不育症という.近年の研究により不育症の病態成立には細胞膜の主要構成成分であるリン脂質に対する自己抗体(抗リン脂質抗体)が密接に関与していることが明らかにされ,抗リン脂質抗体症候群という疾患概念が提唱された1).この抗リン脂質抗体は,当初systemic lupus erythematosus(SLE)の患者血清から見いだされたことから,ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LAC)と呼ばれるが,カルジオリピン(CL)やホスファチジルセリン(PS)など負の荷電を有するリン脂質に対する自己抗体の総称である2).
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